貴方の会社の社員は自力で連結決算書を作成できますか?

なんと、馬鹿げたことを言うのか ?。▲・・・今どき、どこの会社でもシステムが入っていて、『各子会社のFS ( 財務諸表 ) を入力さえすれば、瞬時に「連結財務諸表」が出てくるよ !。』と、言われるのが 落 でしよう。▲・・・・が、なぜか「この問いかけ」には、どこか、引っかかるものがあり、妙に気になりませんか。▲そう、誰もが考えもしなかっただけに、そう言われると、なんだか気になり始めるのが不思議です。▲それに、自力で作成できる社員は、多分いないと思います。

 

 一度は 自力でやってみる価値がある。

ところが、自力でやってみて、初めて、わかることがあるのです。▲「連結決算の本当の大切なものは何か ? 」が。▲あなたの会社でも、一度、問いかけしてみて下さい。そして、末尾に書いた「本当の大切なもの」を確認してみて下さい。

実は、私は、これを実施したのです ! 。

▲出向して間もないころ、そう8月に赴任して、9月に決算。しかも、前任者は退職。▲それだけではない。引継書は何もない。残されていたのは「訂正だらけの仕訳メモ」だけ。▲しかも監査法人からは「今回の連結決算はできないだろう ! 」宣言まで出るありさま。▲私は、前の会社では、日本の上場企業に初めて適用 ( 1978年)された連結決算書を大蔵省 ( 現金融庁 ) に届けた人間である。▲だから、この危機的状況を乗り切る絶対的な自信があった。また、やり遂げることへの意地もあった。

 

経理知識よりも、まず会社のことを知れ ! 

 やり遂げるためには、経理の技法だけではなく、▲その国の会計制度、並びに、その子会社の経営的状況や実態を知しらなければならない。▲たとえば、子会社からFS ( 財務諸表 )が送られてくると、まず、そのFSのチェックをすることになるが、▲その国の会計基準国際会計基準や日本の会計基準と異なる処理をしたものがあれば、それを修正しなければならない。▲また、子会社の経営状況によっては、追加で処理しなければならないようなこと ( 例えば、減損処理や、各種引当金の計上など ) も出てくる。▲このように、経理の技法だけではなく、各国の会計基準や、親会社、各子会社の経営的課題も分かっていなければにらない。▲これが厄介である。なんせ、私は赴任そうそうで、この会社のことがまだわかっていないからである。

 そこで、連結決算策定方法は後回しにして、まずは各子会社の経理責任者とのコミュニケーション強化に力をいれた。タイムリミットまで、わずか2ケ月しかない。▲とにかく、毎日、電話とmail で、私自信のことをオープンにしていった。▲お陰で努力は実った。▲『処理は決算に突入してから走りながらやっても何とかなる ! 。』『それよりも、どんな質問をしても答えてくれるだけの人間関係を構築することだ ! 』・・・それが実ったのである。▲2ケ月間で、完全に信頼できる絆を作ることができた。

 

策定には経理知識の集大成的能力が求められる。

 連結決算の業務は、まず、各子会社のFSを合算して、開始仕訳をし、剰余金の期首残高が前年末と一致することを確認し、内部取引を控除し・・・・と、延々と続く。実に50を超える工程を次々にこなしていかなければならないのである。▲しかも、一つ修正すると、後工程にも影響することが多く、この修正に関連して、また別の修正仕訳を入れていかなければならない・・と言ったことが数多くある。▲非常に複雑な作業である。

このため、連結業務は属人的作業となりやすく、複数の人間で分業して仕事をすることが大変難しい業務なのである。▲しかも、一つの修正仕訳から、それに伴う影響を把握できる高度の知識が必要となるのである。

つまり、連結業務は経理能力の高い人が、小人数で実施しなければならない業務なのである。

 

意欲と体力も忘れてはならない。 

私はこれをたった一人で実施した。▲100を超える修正仕訳を切り、仕訳帳に記入し、精算表に転記し、整理仕訳を行い、B/S ( 貸借対照表 )、P/L ( 損益計算書 )を作成したのである。まさに零細企業並みの方法で、一部上場企業の決算を行ったのである。▲当然、ものすごい時間を要した。▲この必要な時間は夜を使った。▲日中は皆の仕事に付き合い (当時は経理次長であったので諸々の管理業務があった) 。夜に自分だけの仕事をした。▲深夜3時を超える日が、何日か続いた。・・・が、こんなこと、何ってことはなかった。前の会社では徹夜が1週間以上続いたことも経験してきたから。高度成長を支えた我々団塊の世代にとっては何てことはなかったのである。▲それよりも『出向で来た人間が、必死で戦っているのに、この会社の人は早く帰る』・・・この不合理さには、ちょっと考えさせられた。▲そんな悩みも関係なく、問題なく、連結決算は終わりを迎えた。

 

やって見て、分かったこと。

まず最初に感じたことは、「こんな大変な作業は2度とやりたくない」であった。▲それに100を超える仕訳を起こしたにも拘らず、利益は単純合算したものと殆ど同じであった。▲日ごろの管理がしっかりできていれば、利益は途中(親子間取引)で消えることはないのである。▲大事なことは、この100を超える修正仕訳の中で、「利益」と「剰余金 (純資産 ) 」に影響するものは何か ? である。▲このことが、日頃の、グループ会社の経営管理の視点になるのである。▲貴方の会社の経理マンは、「連結決算の技法だけに走っていませんか。」「経営管理の視点を忘れていませんか?。」

 

で、どうしたか。

 経理の人材には限りがある。無駄な仕事は省き、付加価値の高い仕事に集約させるなければならない。▲連結決算作業そのものは、誰でもできるものであり、それ自体は付加価値を生まないものである。▲それよりも、各グループ会社の経営管理をどう実施していくかを考えなければならない。▲そして、この経営管理は高い知識と、能力を必要とするため、広く普及させるためには、制度として構築することが不可欠である。

「無駄な仕事の省き方」と「経営管理制度」の作り方については、この後、詳細に書いていきたい。・・・つづく・・