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財務マンから見た「ある企業の資本政策」

今日は、証券会社が主催する地場企業の「会社説明会」に参加する予定である。▲私は「会社説明会」に出席して、いろいろ質問をさせて頂くことが、とても好きだ。▲普通では聞けないことも、この場で質問すると、だいたい真面目に回答してくれる。▲それは公の場での質問だから、相手も、そうおろそかにできないので、だいたい真面目に回答してくれる。▲それが、とても嬉しい !。▲今日も、質問をさせて貰うつもりで、今、会社情報を見させて頂いている。

 

株価推移の違い

下の写真は「日経平均株価」と「当企業の株価」の推移グラフである。▲両社の間には明らかに2つの違いがある。この違が、あとで述べる「当企業の資本政策」に、すなおに喜べないものを感じるのである。

①2012/12を境に、株式市場は上昇トレンドに入っていくが、途中2014/1~5は一旦下落している。一方、当企業の株価は、この「中だるみ現象」がなく上昇をし続けてきた。

  ②もう一つの違いは、株式市場全体は直近でも好調にもかかわらず、当企業の株価は昨年11月を境に下落傾向にある。

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 純資産は誰のものか?

 貸借対照表の右下に「純資産」というものがある。▲これは何を表すかと言うと、現金・土地・建物などの「資産」から、借入金などの「負債」を差し引いた残りの「本当の財産」を表すものである。▲これは、いったい誰のものかと問うと、なかなか的確な答えが返ってこないことがある。▲この純資産は「株主資本」とも呼ばれるように、これは株主のものに他ならなのだ。▲社長のものでも、従業員のものでもないことを再確認しなければならない。

 

時として不思議なことが起こる

だからこそ、株主から経営を委託されている社長さんは、この「純資産」を増やすために必死に利益を稼ぐのである。▲また、株主も自分の持ち分であるこの「純資産」が増えていくことを楽しみにしているのである。・・・・ところが、そうでないことが時として起こるのである。▲実は、この会社がそうだったのである。

 

一方的な資本の論理

  一株当りの純資産は前期末から259円 ( 1,723円→1,464円 ) も減少しているのである。▲それは、次のような「資本政策」によるものであった。

 親会社がマネジメントバイアウトにより上場廃止になることから端を発し、親会社が所有する当会社の株式を売却したい旨の話が出てきた。▲当会社は、大量の株式売却が市場に出され株価混迷につながることを懸念し、「公開株式買付け」を決断した。▲買付価格は、買付を決定した日の直近一ケ月間の平均株価から10%ディスカウントした価格とした。▲買付株数は親会社の売却予定株数に若干数 ( 概ね1割程度) を上乗せた数とした。▲その後、公開買付で取得した自己株を消却したのである。

 これが一連の流れである。▲この流れの中で、一株当たりの純資産価格を超える価格で株式買付を実施した為に、一株当りの純資産価格の減少を招いたのである。 

 

 財務の視点で見たときに思うこと。

  私はB/S志向派の財務マンである。▲この視点で今回の流れを見たとき複雑な気持ちになる。▲勿論、この一連の流れは、法に乗っ取って実施されたものであり意義を唱えられるものではない。▲また、自分が企業側にいたら、きっと、同じようにしていただろう。▲でもなぜだろう、釈然としない気持ちが残る。▲きっと、それは、次によるものだと思う。

◇私が質問した『こんなに一株当りの純資産価格が下がるのに、本当に株式価値を高める政策と言えるでしょうか』の問いに対して『えっ、純資産価格・・・。自己株式の消却は一般的に株主から好感して貰えるもので・・』と、的確に答えてくれなかった。▲もし、あの時、『大丈夫です。今回の株式消却により一株当りの利益は〇〇円高くなるので、純資産価格の下落は〇年で取り戻します』と答えてくれていたら、本当に株式価値を高める政策だったんだぁ~と、私たちの胸にじ~んと来たはずである。

◇もう一つのモヤモヤとしたものは、今回のスキームがある特定の株主意向に引きずられたものではなかったのかとの思いである。これにはいくつかの偶然が重なり、よけいに、この思いが強くなっていると思われる。 ▲①買付価格を決定した期間が、市場全体は「中だるみ現象」であったにもかかわらず、当社は上昇を続けていたこと。 ▲②株式消却後、一旦はストップ高となったが、最近では下落が続いており、まるで、株式消却の効果 ( 純資産価格の低下 ) を見直すような動きになっていること。 ▲親会社以外に買付に応募した株主がいなかったこと。 ▲こんなことを考えると、『もし、今回のような公開買付をしないで、市場で売却していたらどうなったのだろうか』と思ってしまう。勿論、そうすれば、会社の純資産は減らないし、無借入金経営を継続できたことになる。

 

 最後に

 誤解しないで欲しい。私はこの会社を非難しているのではない。むしろ優秀な地場企業を応援している立場である。▲申し上げたいのは資本の論理とは非情なものであると言うことである。▲その中で、企業は株主平等の見地から諸々の検討をして欲しいと言うことである。今回のケースでは、下落した純資産の回復をちゃんと経営計画におり込んで、財務改善に邁進して欲しいと言うことである。▲逆に、我々個人株主は、もっと勉強して、いろんな、資本の論理で動かされる影響を考えなければならないと言うことである。▲因みに、私は、たった1時間の会社説明の中で、この会社の株主になるべきかどうかの結論を出した。▲『なんだかいい会社のようだなぁ~』なんて漠然な思いで過ごしてはいけないのである。

あっっ、これを言い忘れてはいけない。会社説明会に出席したら、「おいしいクッキー」と「PRグッズ」を頂いた。こんなの初めてである。・・・そういう意味では個人株主への配慮は素晴らしかったです。

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