財務マンよ、お金のことだったら、全幅の信頼を得られるように振舞え。

第五章  資金の回転と財務改革との関係これは、財務改革のために戦い続けた「経理の知られざる戦い」の記録である~

~~~~前からの続き~~~

 

(個別の回収条件を見直す)

私は、「運転資金の回転期間」分析から、「回収先行型」であることを確認し、管理さえしっかりやれば、最も実入りの大きい形であるので、そのままの形を維持することに決めた。

ここまでの分析なら、普通の経理マンでも良くやる手である。▲・・・が、私達は、プロの財務マンである。これだけでは満足しないのである。▲貪欲にも「もっと、よくしよう!」と考えるのである。▲そこで、私は、個々の販売先の取引条件と、実際の回収状況の調査に入った。

 

もともと、部品メーカーと言うものは、いくら大手企業だからと云って、最終製品メーカーの下請的雰囲気のする業界である。だから、我々の立場は強くないのである。その中で、個々の販売先と決済条件を交渉で決めていくのであるから、交渉で押し切られ、相手先の要望を受け入れざるを得ないことも当然出てくる。だから、行き過ぎた不合理なものは是正をお願いしょうと試みたのである。

 

国内の自動車メーカーが規定している「決済条件」は、大体次のようなパターンである。

「納入月の月末締の、翌月末支払い、30%現金、70%手形(支払日起算の3ケ月期日)」・・・・なんとも、複雑な言い回しである。これは、自動車メーカーだけでなく、国内の企業は、大体こんなもんである。そして、少しずつ、「締め日」が違ったり、「現金のウェイト」が違ったり、「手形のサイト」が違ったりするのである。

この違いを「回収サイト」と言う尺度を用いて、相手先ごとに違った条件を共通の物指しで比較できるようにするのである。

 

例えば、先に示した決済方法を、回収サイトで表すと次のようになる。

 

計算式=15日+30日+(70%×90日)=108日

(注)

・15日=納入日~締日までの平均日数

・30日=締日~支払日までの日数

・(70%×90日)=支払日~手形の日数

 

面白いことに、こうやって、個々の企業の決済条件を調べていくと、同じカーメーカーでも、気質や、経営理念の違いが透けて見えてくる。▲あるカーメーカーは実に紳士的な決済条件でありサイトも短い。こちらの事情にも柔軟に対応してくれる。何分にも契約書の文面におごりがない。▲と思えば、あるカーメーカーは、とても厳しい。契約書の文面にやたらと「ペナルティー的な言葉」が出てくる。こんな違いも、すらりとかわしながら注文をとってくる営業も大したもんだ。

 

ところで、調査した結果、問題は国内メーカー2社と、海外メーカー2社に見られた。▲まず、国内メーカー2社であるが、どちらも主要取引先であった。▲そんな関係上、取引も緊密であり、困った時には、いろいろと相談に乗ってもらっていたようである。▲過去、資金的に苦しかったころ、早期決済をお願いしたことがあった。両メーカーとも、金利を払う条件で対応してくれた。当時は高度成長時代でもあったので、そのレートは、べらぼうに高かった。それが、「0金利時代」に変わった後も、そのまま継続されていたのである。

 ▲「こんなに高い金利を払うなら、金融機関から調達した方がよっぽどコストがかからない」・・・まず、そう思った。それに、自分は、「運転資金の回転期間」分析を通して、会社全体では何の問題もないことを確認していた。▲ので、この2社への特別早期決済がなくても充分やっていけると確信していた。早速、営業に「得意先に改定の申し込みをするように」要請した。

 ▲この時に大事なことは、絶対的な自信で営業にお願いすることである。こちらが、どちらでも良いような頼み方をすると、営業は迷ってしまうのである。そうでなくても、お得意様には、過去、無理を聞いてもらった手前「もういいです」とは、言いにくいものである。▲それを察し、私は、「いざとなったら、私が、責任をもって、資金を調達してくるから、もう、お得意様にはご迷惑をかけません。任せて下さい」と云いきった。たぶん、私の出向元会社と密約でもしているのだろうと思ったはずである。が、そんなこと、できっこないのに、こう言う時、出向者は実に都合が良い。ハッタリが使えるのである。

 

このようにして、販売先の両社ともに、快く受け入れをして頂きました。

長い間、ご支援を賜り本当にありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。