東芝よ!、財務プロのマインドを疎かにするな!

今、東芝の会計問題が世を騒がせている。

会計に携わってきた私からすれば、大変、腹立だしいことであもあるし、許せない気持ちでいっぱいである。▲今、集団訴訟の話が持ち上がっているようであるが、公表された決算を信じて株式投資した者からしたら至極当然の行動である。人を騙すということが、いかに罪が大きいかと言うことを感じてほしい。

私の経験上から言うと、これは、人災の何物でもないと思う。▲今の会計は、その信頼性を確保するために大変厳しくなっている。▲あの「エンロン会計不正問題」で、世界5大監査法人の一角(アンダーセン)が崩壊し、企業会計への規制は一層厳しさを増したことは、まだ、記憶に新しい。▲それをきっかけにして、日本版SOX法と言われる「内部統制制度」が2009年3月期から施行された。▲この大変革の時に、私は会計の責任者であった。▲金融取引法は、会社にとてつもない責任と、労力を課せたのである。▲簡単に言えば、監査法人がやっていた業務を企業に転嫁させたのである。▲おまけに、これに違反した者に禁固刑まで課せたのである。

そのせいもあり、今では、何処の会社でも「内部統制部門」というセクションがあって、ありとあらゆる手法を使って、常時、監査をしている。だから、会社が知らなかったということはないはずである。▲だから「騙している」と言う認識はあったはずである。現に、この問題も、内部告発が発端だったようである。

では、なぜ、知っていながら、騙し続けたのか。▲今の会計はとても複雑になっている。▲まだ、起こっていないことでも、将来を予測してリスクがあれば、それを会計に織り込むことが要請される。▲だから、会計に乏しいトップは「そんなことは起こるはずがない」・・・と思ったり、「ごちゃごちゃとした細かいことは聞きたくない。なんとかしろ」・・・なんて、投げやりな指示をしたりすることがある。▲大変残念なことであるが、その位、今の会計は複雑になっているのである。▲プロでないとなかなか理解できないことがある。

私が、一番、腹立だしいのは、会計のプロが、上からの指示に屈したことである。▲情けない。「そんな会社だったら辞めてしまえ」と言いたい。▲このくらいの覚悟がなくてはやれない職業なのだ。▲こんなことに屈したら、もう、どこの会社でも会計としては雇って貰えなくなる。▲そう、会社を辞めるだけでなく、社会からも見放されることになる▲そのことを自覚するべきである。

 

蛇足であるが、自分の体験談を記す。それは、同じグループ内のF社の会計不正問題が発覚した時だった。その会社は東証監理ポストに入れられた。親会社であるT社は、グループ内企業の経理体制の確認に入った。▲当社にも、当然来た。▲見て驚いた「こんな少ない人数で大丈夫なのか?」▲私は出向元の会社と、当社と比べたら、事業規模はちょうど1/10だった。だから、経理要員も1/10でやろうと考えていた。▲それは大変だった。私の勤務は夜中の3時を超えることもしばしばだった。▲中枢機能までもアウトソーシングに出した。▲業務改革も必死でやっていた。▲こんな中で、当社のトップに「親会社の意見」が届いた。▲「このままだと、あの問題を起こしたF社と同じようになる」・・・とのことだった。▲私は、即座に反論した。「マインドが違います。私たちのマインドはF社とは一緒ではない」▲さすが、トップである。安心した顔をしてくれた。

 

私が、一番大事にしていた「マインド」が、またしても疎かにされた。・・・そのことが、一番悔しいのである。

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