読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

なかなか見えない「自分の立ち位置」

・・・・この投稿は、前回(12/10)からの続きです。・・・・

 経営戦略は時代と共に変化する。私の現役時代も度重なる変化をしてきた。そして、今、また、大きく変化しようとしている。事業再編で事業規模が急拡大しようとしているのである。▲私は、この飛躍的な量拡大を狙うビジネスモデルに、ある種の心配をしている。▲それは、「量の拡大」が会社の成長につながるだろうか・・・と言う疑念である。

  思えば、「集中と選択」に舵を切った後も、我々は、常に規模拡大を目指してきた。▲その後の「グローバル化」も、そして、今回の「事業再編」も量拡大を狙ったものだった。▲経営戦略の流れは「規模の経済」→「範囲の経済」→「創造の経済」と言われて久しい。もう、20年前にもなろう。なのに、我々は、未だに、規模拡大を狙っている。市場が成熟した時代に入ったにも関わらず、旧態以前の考え方でいいのだろうか?。・・・そんな疑問に駆られるのである。▲自動車業界は幸いにして、目を世界に向ければ、いつも、どこかで、成長している市場があった。だから、いつも規模拡大を狙ってきた。それが、我々に染みついてしまった。量の拡大が会社の成長につながると思い込んでしまったのである。

 今、私は、ボストンコンサルティンググループが開発したPPM理論 (商品のポートフォリオ理論) を思い出している。そう、あの、市場成長率と占有率を軸にして「問題児→花形→金の成る木→負け犬」と区分けするあの理論のことである。▲それによれば、高い市場占有率 (シェア) を獲得すると、一般的には利益が増えると言う。シェアの高い領域にある「花形」と「金に成る木」がその典型である。▲なのに、最近の業績は売上が順調に伸びているのにもかかわらず、利益がどうも思うようについてこない。いや、相当厳しくなっている。▲それも、シェアが高いのにである。R事業などは世界第2位の高いシェアを誇る立派な事業である。それが、利益で伸び悩んでいる。▲このことは、プロダクトライフサイクルが成熟期にあることを意味していることに他ならない。

 ここまで言うと「素人が業界のことも知らずに何を言うか」・・・と、お叱りの言葉が聞こえてくる。▲確かに、自動車業界は高い技術に支えられ、今までの概念では考えられないような製品開発が進んでいる。「都市化が進んでくると交通も公共化してくる」と言われた時期もあったが、まだまだパーソナルユースとしての自動車は発展していくであるう。だから成熟期に入ったなどとは言わない。成長期が今後も続くであろう。▲しかし、完成品の自動車はそうであっても、それを構成する部品単位で見たら、それは正しいのだろうか?

 そんな自問自答を繰り返している中で、私は、過去の苦い経験を思い出している。▲それは、我々が、中国に進出して、間もない頃であった。▲中国系のコンペチターから事業提携の提案があり、そのコンペチターが言った「我々は御社のような早いスピードで製品は造れないが、コストでは負けない」「だから、両社の強みを生かして提携しよう」と。▲勿論、私は反対し、この案件は破断となった。▲でも、コンペチターの「コストでは負けない」と言ったことは間違ではなかった。その後の、受注競争ではコンペチターの低コストには大変悩まされた。 ▲我々が、どんなに優れた製造技術や、設備でタクトタイムを短縮していっても、コストで勝てないと言うことである。▲日本は技術投資や、設備のコストが高すぎるのである。そんなことをしなくても、相手はちゃんと物を作くってしまうのである。▲京セラの稲盛氏が言うように、「高い設備で早く作ることだけが安いコストではない。機械の値段と速さのベストマッチングが適切なコストを生み出すのである」。・・・真にその通りのことが起こっていたのである。 ▲このことからも分かるように、技術的付加価値が小さい分野では「経験曲線効果 (B.Henderson提唱)」は生かせないと言うことである。▲我々も、「量の拡大でコストの優位性は保たれる」との考えは、そろそろ見直さなければならない時期に来ているように思う。

 少なくても言えることは「技術の手」を緩めてはならないと言うことである。▲ そうでなくても、我々は、系列の枠を超えた取引先の広さを強みにしてきた。▲それは、取りも直さず、技術の力が、横展開に取られ、基礎研究や応用研究が手薄になっていたことも否定できない。これからは、狭くてもいいから「キラリと光った」技術の構築に期待をしたい。

 今、「引き算の経営」と言うことを良く耳にする。▲人は「他人のことは強みを気にする」が、「自分のことは弱みを気にする」と言う。▲そう、「隣の芝は・・・」と言うやつである。▲この見方が経営を誤った方向に導くと言うのである。▲経営者の多くは、他社の強みに脅威を抱き、自社の弱みを何とかしようとする。▲市場が狭いからと言ってターゲット先を広げる。製品ラインナップが少ないといって製品開発に走る。・・・と、言った具合に足らないものを次から次へと足していく。まさに「足し算の経営」をしていると言うのである。▲今の時代、こんな広範囲で戦っていたのでは勝ち目がないと言うのである。▲自分の弱みを補うのではなく、強みを伸ばす経営が必要だと言う。▲そう言えばある教育者も言っていた。「教育は出る杭を育てなければならない」と、画一的な与える教育に警鐘を鳴らしていた。▲そんな思考で進むべき領域を探し出して欲しいと願っている。

 最後に、具体的な意見具申をさせて頂きたい。▲我々は、過って、「経営の多角化」や、「米国の急激な増産対応」で、「経営資源の分散化」や、「固定費の増大」を招くなど、貴重な体験をしてきた。▲そのことを、今、生かさなければならない。 ▲私は経営とはバランスだと思っている。今の生産方式も、管理方式も、今の規模にベストマッチするように作られてきたものである。だから、今の経営基盤の上に、無理して、拡大した量を載せてはならない。最初は、従来通り2社の生産基盤をそのまま継続した方が良い。そして、時間をかけて徐々に固定費を減らしていけば良い。▲過去の経験から「量に見合った生産方式と管理方式がある」ことを教わった。そのことを、忘れてはならない。