自宅に一通の「はがき」が届いた。
それは、購入後一年目の「定期点検」の案内だった。
そう、私は、S社のH車を購入し、今日で一年目を迎えた。
車の調子は、いたって順調で何の不満もなかったが、一つだけ疑問に思っていたことがあったので、いい機会だから、それを確かめてみようと、ディラ―のドアをたたいた。
「えー、〇〇と申しますが・・・」
その一言で、私に関係する書類がすーと、カウンターに出てきた。
さすが、ディラ―だ。感心した。
「あのー、調子はいいんですが、一つだけ確認したいことがあるのですがぁー」
私は、期待感をもって、こう、切り出した。
「実は、1年も乗っているのですが、危険時に自動でブレーキが作動するとお聞きしていたのですが、まだ、一度も体験したことがないのです。本当に、作動するか、どうか、確認してもらえませんか?」
明らかに、驚いた顔付に変わった。そんなこと、聴かれたこともなければ、対応マニュアルにも書いてない。きっとそう思ったのだろう。返事にちょっと時間がかかった。
ディラ―:『システムで制御されているので心配ありませんよ』
私 :「いゃー、システムと言っても見えないしなぁー、心配だなぁー。」「バーチャルでも、いいから検証してもらえませんか?。そう、あのバイクの教習所で、路上運転の変わりに、ゲーム機みたいなもので危険体験をする、あのやり方みたいなもの、あるでしょう?。有名なカーメーカーだから、その位あるでしょう?」
ディラ―:『ないですが、カーメーカーで確認しているはずですから、大丈夫ですよ』
私 :「カーメーカーでは、どのような方法で確認されているのですか?」
ディラ―:『・・・・・』
私 :「分からないんですか。困ったなぁー。だったら、段ボールかなんかを置いてテストして貰えませんか?」
ディラ―:『そんな無茶いわないでくださいよ。』
ふがいない答えの連続で、私の声も次第に大きくなっていった。
私 :「こんなじゃ、事故が起きてみないと分からん。と言うことですか。エアーバックと同じかよー」
さすがに、この人、困った。なんと、自分の部下に相談をしたのだ。
代わりに出てきた若きサービスマンが、驚くべき対応を見せた。
若きサービスマン:『お客様のご心配もよーく分かります。私が運転しますから、体験してみませんか?』
おー、危ないじゃん。一瞬そう思ったが、自分もここまで言ったからには後には引けない。そう思い直して同乗することにした。
若きサービスマン:『実は私も同じ疑問があり、先日、同じメーカーのワンランク上の車で試してみました。』
『そうしたら、ちゃんと効きました。それで安心してお客様に進めることができるようになったのです。』
『でも、軽では試したことないんです。ちょっと不安ですが、慎重に運転しますので、心配なさらないで下さい。』
そう言って4度トライをした。で、一度も成功しなかった。
普通だったら、ここで、激怒するところであるが、不思議と私の心は穏やかだった。結果よりも、私の言い分に、とことん付き合ってくれた、この若きサービスマンに感心していた。
若きサービスマン:『お客様のお陰で、貴重な体験ができました。このことを、カーメーカーに伝え、満足して頂けるような情報を用意させて頂きます』・・・と、御礼を忘れていなかった。この言葉で、私の無理なお願いも、無理押しではなく、役に立ったと、妙に満足感を与えてくれた。