造れば売れる時代ではなくなった。

第四章  付加価値と財務改革との関連 ー付加価値を高めることが、財務改革の基本ーこれは、財務改革のために戦い続けた「経理の知られざる戦い」の記録である~

~~~~前からの続き~~~

(外部環境によって付加価値を増やす戦略が変わってくる)

ここで、お断りして置かなければならないことがある。前出のケースは、リーマンショック前だからこそ取り得た戦略であり、今は、この方法では付加価値は増やせなくなってきている。

どういうことかと言うと、・・・・

これを説明するために、付加価値の算出式を、もう一度思い出して欲しい。

付加価値=営業利益+人件費+減価償却費+賃借料・租税課金・特許料

このように、「人を増やし、設備を増強し、生産能力を増やして」いけば、営業利益が増え、付加価値が増大することができた。これは造(生産)れば売れる時代のことであり、実際、私達はこの方法で付加価値を増やしてきた。実にラッキーな時代であった。

 しかし、リーマンショック以降はそうでなくなった。現に日本国内での乗用車生産台数はリーマンショック前の1,000万台までは回復しておらず、800万台前後の横這いのままである。「造れば売れる時代」ではなくなったのである。

 しかも、あのピーク時の生産能力をそのまま保有している会社も少なくないと思われる。いくら円安になったからと云って、一旦、海外移転した生産は、そう簡単には戻せない。このような状況は、なにも自動車産業だけに限ったことではない。多くの業界も同じような状況下ある。

 このような状況下では、従来のような、単一的な方法では付加価値額を増やすことが難しくなっている。▲もっと幅広い戦略として捉え、新たなビジネスモデルの構築や、企業間を越えての産業構造の変化をも含めた戦略を考えなければならない時代に入った。