こんな辞令、開き直りでもいいから受けて下さい。

1.最初は「開き直り」と決める。

 

出向を言い渡された時に、焦ってはいけない。

なんでもいいから、冷静に受け止めて下さい。

最初から焦っていては、チャンスを逃すことにもなるからです。

どうせ、断っても、「彼は断った!」と言う悪いイメージしか残らない。

だったら、冷静に受け止めて、後のチャンスをものにすべきです。

すっきりしない気持ちは、いくらでも整理する方法があるのです。

そんなこと、あとから、じっくり考えればいいさ!

 

動揺している貴方に、少しでも落ちつくことができるように、

私の「開き直り」を紹介します。

 

忘れることができない、あの2001年の夏、

煮えたぎるような暑い日が続いていた7月25日のことだった。

 

私は、本社に呼び出されて、会議室の一室で人事部担当の取締役を待っていた。

少し遅れて入ってきた取締役は、申し訳けなさそうに話しかけてきた。

『実は、当社を担当する監査法人から話しがあり、人材派遣の要請を受けました。』

実にストレートな言い回しであった。すぐに本題に入り始めたのである。

私も、もう52歳で資格も部長格、既に経営側に立っている人間である。

いまさら、今回の出向がどんなものなのかなど、くどくどした説明は望んでいなかった。

それでも、その取締役は、私のことを気遣ってか、言葉を選びながら、粛々と説明を続けていった。

『その会社は、本社移転(横浜から愛知県豊川市)が予定されていて、社員に勤務地移転を打診したようです。その結果は、予想に反して、多数の退職者が出てしまい、上場会社としての経理機能を維持していくことが、あやぶまれるまでになってしまったとのことです。この危機的状況の中で監査法人が人材確保に動いたようです。』

『出向先が上場会社ですから、誰でもいいと言うわけにはいきません。こちらも真剣に検討をした結果、貴方を選考しました。』

 

断ることなど、毛頭できないことは承知の上である。

質問をすることもなく、わずか10分足らずで終了した。

このようにして、私の出向は決まったのです。

 

 でも、考えて見れば、実に妙なことである。

異動を嫌って止めていく人の穴埋めに、会社の命令一つで動く人間があたる。

人の価値観とはいろいろである。どちらが正しいかはいえないが、

少なくても仕事に対する執着心の強さでは、けして負けていないと思う。