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たとえ身内であっても・・・財務マンに甘えは許されない。

第五章  資金の回転と財務改革との関係これは、財務改革のために戦い続けた「経理の知られざる戦い」の記録である~

~~~~前からの続き~~~

(甘えの構図があったのでは改善はできない)

私は、運転資金の回転について、その妥当性を確認するために、「販売先別の取引条件」と、「実際の回収状況」について調査を進めていった。

その結果、国内取引先の2社については、苦しかった時代に高いコストを払って特別決済をお願いしたものが、そのまま放置したことによる問題であった。相手先の問題というより、当社側の管理不備による問題であった。

 

ところが、残りの海外販売先2社の問題は、少し違っていた。

根が深かったのである。

 

まず、最初の海外販売先の一つであるが、これは、当社の米国生産子会社であった。

この子会社宛の売掛金残高は明らかに多すぎた。

なぜ、こんなに、売掛金が多くなるのかを確認するために、決済条件を聞いてみた。

返ってきた返事は「D/A At sight (Document Against Acceptance)」だった。

これれは、「荷為替手形の提示を受けたら、直ちに代金を支払う」と言う契約であるから、契約そのものには何ら問題はない。ただ、履行されていなかったのである。

履行できない理由は、充分な利益が出せず、必要な資金が作り出せなかったためである。

この手の問題はちょっと厄介である。小手先では直らない問題である。

改善には、時間も労力もかかる。

そこで、私は、まず、意識改革から手を付けることにした。

当時、本社は、「子会社が資金で困っているのであれば助けなければならない」と思っていた。この甘えの構図が、いつしか、「At sight 」から「ある時払い」に代わって行いったのである。そればかりではなく、お互いがこの問題に対して不感症になっていた。

 

私は、「甘えの構図は万病の元」だと思っている。これに慣れてしまうと、自分の足が俵についているのに、何の踏ん張りもしないまま、あっさり土俵を割ってしまうものである。緊張感を持たないということは、いかにも、情けない結果を招くものである。・・・と、思っている。

 

そこで、決済条件をL/C(Letter of credit )に変更し、銀行を介在させることで、緊張感を取り戻そうと考えた。実は、これには、少しコストがかかる。銀行に支払保証をしてもらうための費用がかかるのである。「親子間取引で、わざわざ、余分な費用をかけることはない」と、猛反対された。ここで、引き下がったら、プロではない。

「分かった。皆が反対するのは費用がかかるからだな」そう言って、まず、その場は一旦引いたが、ここからはプロの意地である。銀行と「コストの掛からない特別な方法」を検討したのである。運よく「インボイス・ネゴ」と言うスキームを開発できた。これは、表向きには銀行が介在するが、支払保証は銀行でなく当社自身が行う仕掛けのスキームである。だから、費用も事務手数料程度で済んだ。

 

私は、このスキームを実行することを経営会議で説明をした。もう、誰も反対する者はいなかった。(これで、銀行と組んで新たにスキーム開発したのは「一括信託方式での手形レス」に続いて2つ目になる)

 

お陰で、これ以降は、必死で決済をするようになった。ただ、そう、すんなりいったわけではない。慣れ親しんだ「生ぬるい環境は、そんなに、急には、元に戻らないものである」私は、このこととは別のことも含めて、出向元から貿易実務と管理指向のスペシャリストに来てもらうことにした。この彼の功績もあり、本来の緊張感を取り戻せたのである。このことについては別の章で詳しく述べたいが、ここでいえることは、「甘えの構図があっては改革なんてできない」ということである。