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財務のプロよ ! 。我々の任務は「金融市場から信用を得る」ことである。そのためには常に真実をつらぬけ。

諸事日記

前日に続いて「東芝の不正会計問題」についてである。▲皆さんから「多かれ少なかれこのようなことは他の企業にもあるのではないか?」・・・との意見を頂きましたので、あえてこの問題の難しさを書きたいと思います。

昨日、私は、この手の問題は明らかに人災であると申し上げた。その上で、会計を担う人達の「マインド」が失落していることを叱責しましたが、実は、それほど単純なものでもないことも、あえて書きます。(注・・これは、粉飾決算を肯定するものではありません。その難しさを分かって欲しいとの思いから投稿することにしました)

 

まず、記憶に残る過去の粉飾決算の事例を見ると、カネボウ(2003年)、ライブドア(2006年)、加ト吉(2007年)、富士バイオ(2007年)、オリンパス(2011年)などがあります。これらは、いずれも、恣意的意志が働いていたものばかりです。▲私流に言えば言語道断である。▲が、もし、貴方が会計の責任者であったら、どう判断したでしょうか?。▲このまま正直に決算報告をすれば、赤字転落で債務超過になる。▲そうなれば、銀行借り入れはできなくなり、上場廃止にもなる。事実上の倒産である。たたった1期の会計期間の出来事で、脈々と続いて来た会社の歴史に終止符をうつことになる。▲どうですか、そんな状況の中でも、貴方は、正しい判断ができるでしょうか?。

 

それでも、貴方は「正しい判断をする」と答えると思います。▲勿論、私の答えも、同じである。

 

ところが、事は、もうちょっと複雑なのである。▲それは、2000年から始まった会計のビックバンにより引き起こされた。▲これ以前は、日本の会計基準は「実現主義」を旨としていた。▲実際に、ことが起きた時点で会計に織り込むというのが基本であった。▲そう、分かり易かったのである。▲そこには恣意的判断は入り込む余地などなかったのである。▲それが、会計のビックバンで大幅に変わったのである。▲IFAS(国際会計基準)に、徐々に修正されていったのである。▲そのことで「実現主義」から「将来予測を含むリスクの織り込み」に変わったのである。▲これによって、前出の問題が、非常にデリケートになってきたのである。

 

例えば、「事業用資産の減損会計」という基準があるが▲ある工場の1つが、今期、赤字に転落した(会社全体では黒字であるが)場合、この赤字が「今後も継続するのか」それとも「1次的なものなのか」を判断しなければならないのである。もし、今後も赤字が継続するのであれば、その工場の建屋、設備共に、回収可能性がある範囲まで減額しなければならないのである。▲工場1つの資産を減額するのであるから、その額も中途半端ではない。▲これだけで、債務超過になることだってある。▲重大事件、勃発である。▲ややこしいのは将来発生する利益を予想することである。▲将来のことを予測するなんてことは、何が起こるか分からないのに、できっこないのである。▲なのに会社の将来まで左右するような判断を迫られるのである。▲こんなことが、今の、会計基準では、いっぱいあるのである。

 

将来予測なんてものは、その人の気持ちで大きく変わる。▲外部環境や、同業他社との競争状態、自社の持つ「技術力」「コスト力」「販売力」などを考えて答えを出すことになるが、▲前向きに考える人と、慎重派の人では、作る資料も随分変わってくる。▲どちらが正しいか、なんてのは分からない。・・・これが実態である。▲さあ、どうする。▲あなたの答えは、もう、分からなくなっているはずである。▲会計の責任者は、いつも、こんなことに直面しているのである。

 

そこで、必要になるのが、企業風土や「マインド」になるです。▲当社では「たゆまない成長」を企業理念の一つに掲げていたが、私自信は「そんなこと糞くらえ」と思っていた。▲「企業は山あり谷ありである。大きく前進する前には踊場があって当たり前」と思うことにしていた。▲「会計の上だけで、毎期、成長することなんてことは、鼻から考えていなかった」▲短期間の利益で一喜一憂しないで、純資産をコツコツ増やしていくことが企業繁栄の道だと考えいた。▲これくらいの信念を持たないとやっていけないのである。

 

それに、もう一つ大事なことは、会計のプロと言っても、いつも否定的なことばかり言っていたのでは、いざと言う時に、だれも聞いてもらえないことになりかねない。▲私は、いつも、会計的に起こり得るリスクを事前に話をし、その対応にあたるようにしていた。▲時には「お前の話は暗くて、聞きたくない。そんなことが起こるはずがない。」と罵倒されたこともあった。▲それでも、必死に手を打つ姿を見て、皆は、ついてきてくれた。

 

「全国の会計責任者よ。大変であるが。自分の信念をつら抜け ! 」・・・これが、私の言いたいことである。

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