第2章 戦いに向けて体制を整える。/3.戦力を分散させないために、戦うべき「土俵」を明確にする。 _これは、財務改革のために戦い続けた「経理の知られざる戦い」の記録である。_
~~~前日からの続き~~~
(戦うべき「土俵」の決め方)
戦うべき土俵とは、仕事をする上で、もっとも力を入れる「場所」と「その広さ」のことで、ここに上がったら絶対負けてはいけないと言う死に物狂いで頑張る場所のことです。どうですか?。貴方はこんな土俵をもっていますか?。
どこの会社でも部門ごとに役割分担を記した分掌規定などを作りますが、そんな、のんべんだらりとした強弱のつけられないようなものではないのです。全力投球すべき場所が書かれていなければなりません。
私は、会議の席上で「なぜ、そんなところで頑張るのだ!。力を入れるところは、もっと別だろう」とか、「君の足は、いま、土俵にかかっているんだぞ、なぜそこで踏ん張らないんだ!。そんなにあっさり土俵を割ってどうするんだよ!」なんてことを思うことがたびたびありました。これは、土俵が定まっていない証拠です。
そんな、絶対無垢の「土俵の決め方」をお教えします。
大切なことは以下の3点です。
- 役割で考えず目的で考える。
- 他部門との境界線を外して考えてみる。
- 戦う広さはできるだけ狭くする。
(制度会計も管理会計も全てこれに通じる)
3つのうちで、最も大事なことは①です。これは、土俵を考えるときに、役割や機能で考えず、目的で考えてみると言うことです。
なぜなら、役割や機能で考えるとものすごく沢山のアイテムが出てきてしまい、何が大事なのかさっぱり分からない状態になってしまいます。そうでなくても限られた戦力しかないのですから、もっと絞り込まなければなりません。
そう、ゴチョゴチョとした長ったらしいもではなく、すっきり一言で分かるようなものでなくてはなりません。その為には、「役割や機能は、目的を達成させるための手段に過ぎない」と思ってください。そして、「なんでこんな役割や機能が課せられるのか」と遡って考えてみて下さい。この答えが、貴方の部門の目的であり、闘うべき「土俵」なのです。
私は、経理の目的を「全ては、資金を円滑に廻す(調達)ことにある」と考えています。
なぜ、そうかと言えば、それはこんな風に考えられるからです。▲よく、会計は制度会計と管理会計の2通りの会計があると言われ、この両者は、全く別ものとして取りざたされていますが、目的から見れば、つながっていることに気がつくはずです。
たとえば、制度会計は、株主や債権者などに会社の経営成績や財務状況を報告するためのものですが、その方法は法律でがんじがらめになっている関係で、難しい理論や手法が求められる世界となっております。▲このため、まるで、この理論や手法を理解することが究極の目的みたいに考えがちですが、これは、大きな間違いです。
我々は外部監査人ではないのです。企業人なのです。その企業から見れば、この制度会計は、会社の経営状況を正しく公表をすることで、株式市場や、金融機関の信用を高めるために行っているものです。つまり、資金調達できる環境作りを行っていることに他ならないのです。
また、管理会計は、自らの経営に役立たせるために行う会計ですが、収益向上や、投資とリターンのバランスをとるために行っているものであり、まさに、利益を向上させより多くの資金を捻出させることと、投資とリターンのバランスを取り資金不足を回避させようとしているものです。
どうですか、両者は「全ては、資金を円滑に廻す(調達)ことにある」でつながりましたね。▲これが目的であり、闘うべき土俵なのです。
(攻めるときは攻め、引くときは引く)
次に2つ目の「他部門との境界線を外して考えてみる」ですが、これは、前の「戦うべき土俵が違っていた」で説明したとおりです。目的達成のためには、他部門の領域であっても躊躇することなく仕事を仕掛ける姿が必要だということです。その範囲まで広げて土俵と考えなければなりません。
3つ目の「戦う広さはできるだけ狭くする」は土俵の大きさを、むやみに大きくしないことです。「目的さえ達成できれば、それで良し」といったぐらいの割切りが必要です。あくまでも、仕事はポインティーに、余分なところに大事な力を注がないといった割り切った考え方をすべきです。
さあ、これで「戦いに向けた体制つくり」は80%でき上がったことになります。
後は、走りながら、体制固めをしていって下さい。